現在の日本経済の成長率は長期的には年率1.2%にとどまると思われる一方、金利は膨大な国債を発行しているため今後相当上昇する可能性がある。
そうなるとロ−ンを組んでも返済できない恐れが強くなり、この点でも戦後の好循環モデルは破綻したと言える。さらに問題なのは長寿化への対応が進んでいないことである。

現在、日本の平均寿命は女性が八五歳、男性が七八歳である。このような社会は八0代の人がたくさんいる社会であり、それら高齢者の多くはケアの受けやすい住宅を必要としている。
ところが、ほとんどの高齢者の住宅は彼らが若い頃につくられており、自宅ではケアを受けにくい。ケアを受けやすい住宅に移り住もうとしても、住宅の流通市場が未整備で適切な高齢者住宅や高齢者施設が極端に不足している。
第2章で「安心ハウス」について述べたが、そうしたものが非常に不足しているため、高齢者は生活の不安を抱えながら動くことができないでいる。流通市場がないので住宅の転売が困難であり、たとえ売れても値段が非常に安いために資産r67喪失の恐れがある。
その結果、ケアに向いた住宅に買い換えることができないという非常に深刻な事態がいま起きているのである。これが戦後の高度成長時代に大成功した住宅政策の帰結である。
大成功したがゆえに、次の時代に備えて既存住宅の流通市場の整備など必要なシステムをつくってこなかった。そのために現在、国も国民も大きなコストを被らなくてはならない事態に直面しているのである。
日本の住宅市場のもう一つ問題は「住宅の質」の問題である。戦後、高級志向ということで人々が新しくて大きな家を求めてきた結果、住宅の表面的な質、例えば部屋の数や広さ、快適さ、デザインなどは相当に良くなっている。
強度や耐久性、健康性などについてはまだまだ改善の余地がある。例えば強度でいうと耐震性が問題だが、一九八一年の建築基準法施行令の改正によって、現行の耐震基準である新耐震基準が導入された。
それ以前の耐震基準と比較すると、新基準では一定規模以上の大地震に対する建築物の安全性について、より詳細な構造計算で検討することを規定した。それから木造住宅については必要な壁の量を増やし、地盤が軟弱な一定地域での基礎は鉄筋コンクリートによることとした。
九五年の阪神・淡路大震災の結果から、新基準施行以前につくられた住宅は潰れたものも多かったが、施行後の厳しい基準でつくられた家は以前より耐震性を持っていることがはっきりした。


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